金沢茶寮に学ぶ「顧客体験マーケティング」——不便な立地でも満席になる理由

暑い夏もそろそろ終わりますが、みなさんはどんな夏休みを過ごしましたか?
私は久しぶりに、10代を過ごした金沢へ日帰りアートの旅をしてきました。
21世紀美術館を訪れ、近江町市場で海鮮丼を食べるのが目的だったのですが、せっかくなので「手作り体験」にも参加してみようと思ったのです。検索で見つけたのが、「金沢茶寮」の金沢塗り体験でした。
▶︎ 金沢茶寮
2時間・税込7,200円の体験。あらかじめ用意された白い茶碗に色を塗って完成させ、さらにその器でお茶をいただけるという内容です。実際に参加してみると「これはただの体験イベントではない、マーケティングのプロが設計した“ビジネスモデル”だ」と直感しました。
不便な立地でも満席になる理由
金沢茶寮は、観光名所・東茶屋街からほど近いものの、実際には山奥のわかりづらい場所にあります。私は土地勘があるつもりで徒歩で向かいましたが迷ってしまい、最終的に地元の方に助けられて到着できました。
それほどアクセスが不便でありながら、予約は常に満席。ここに「体験を商品化する設計」の強さが表れています。
陶芸体験と金沢茶寮の差別化

一般的な陶芸体験では、作陶の一部を体験し、完成品は後日郵送という流れです。確かに本格的ですが、観光客にとっては「出来上がった頃には熱が冷めている」ことがデメリット。
一方、金沢茶寮の金沢塗り体験はこうです。
- 速乾性塗料を使った簡易体験
- その場で完成、持ち帰り可能
- 完成品でお茶とお菓子を楽しめる
つまり、観光客が求める「すぐに楽しめる・思い出に残る・映える」体験を2時間に凝縮しているのです。
これはサービス提供者が「本格的な体験」を売りにするのではなく、顧客の欲求に100%フォーカスした逆転の発想だと感じました。
マーケティングのプロが仕掛けた「仕組み」
さらに驚いたのはレビュー投稿の流れです。
「レビューを書き込むとお茶菓子がもう一ついただける」と案内され、参加者は一斉にレビューを書き込みます。そのタイミングは、絶景を眺めながら美味しいお茶をいただいて“感情が最高潮”に達している瞬間。結果、自然と高評価レビューが量産される仕組みになっていました。
ここまで体験設計が精緻に組み込まれていると、「これは間違いなくマーケティングのプロの仕事だ」と確信します。調べてみると運営は東京のコンサルティング会社によるもので、納得感がありました。
「モノ」より「体験」が価値になる
帰宅後、器の塗料が浮いてきたり、やや剥がれやすいことに気づきましたが、不満はありませんでした。なぜなら、器そのものではなく「体験」にこそ価値があったからです。

ここでしかできない体験、SNSにアップしたくなる体験、そしてレビューしたくなる仕掛け。顧客の心理をシミュレーションし尽くしたサービスは、立地の不便さをもはや弱点にしません。むしろ「苦労してでも行く価値がある」と顧客に思わせる力を持ちます。
顧客体験から逆算するサービス設計
この事例から得られる学びは、商品やサービスを設計する際に「顧客体験」を出発点にすることの重要性です。
- 顧客が体験中にどう感じるか
- 体験後にどんな行動をとるか
- どのタイミングで喜びや驚きを提供するか
これらを逆算しながら設計することで、宣伝は顧客が自然に担ってくれるようになります。
さて、あなたのサービスは顧客にどんな「体験」を与えているでしょうか?
「顧客体験マーケティング」という視点で見直すと、ビジネスの新しい突破口が見えてくるかもしれません。
金沢茶寮:https://www.kanazawasaryo.jp/
株式会社U.S:https://usinc.jp/
